
歯科業界では、デジタル技工の導入が急速に進んでいます。従来のアナログ中心だった工程から、スキャニング、設計、製作までをデジタル化する流れは、歯科医療に大きな変革をもたらしています。では、デジガル技巧にはどんなメリットがあるのでしょうか。今回は、デジタル技工の導入による具体的なメリットを4つご紹介します。
患者の負担軽減・治療の精度向上
デジタル技工は、患者にとって大きな負担軽減をもたらします。これまで一般的だったシリコン材を用いた型取り作業は、嘔吐反射を誘発しやすく、不快感をともなうことが多くありました。しかし、口腔内スキャナーを用いたデジタル印象採得により、短時間かつ正確に口腔内データを取得することができるようになりました。このことから、型取り時のストレスを大幅に軽減することが可能となり、小児や高齢者など、従来の型取りに抵抗を感じやすかった患者にも負担の少ない治療を提供できるようになっています。さらに、スキャンデータをもとに製作される補綴物は、適合精度が非常に高く、装着後の違和感やトラブルが減少します。
万が一、スキャンに不備があった場合でも、その場でデータを確認して即座に修正できるため、再型取りのリスクも最小限に抑えられます。この結果、治療回数の削減や通院期間の短縮が可能となり、患者にとっても医療提供者にとっても大きなメリットとなっています。
連携強化と効率化
デジタル技工のもうひとつの大きなメリットは、歯科医院と技工所の連携強化です。従来は、物理的な模型を作製し、それを運送して技工所に届ける必要がありました。しかし、デジタル技工では、スキャンデータをインターネット経由で即時に共有することができるため、物理的なやり取りが不要になります。これにより、模型の破損リスクを回避できるだけではなく、データ共有のスピードが格段に向上します。また、データベース上で技工士とリアルタイムにフィードバックをやり取りすることも可能になり、設計段階での細かな修正依頼にも迅速に対応できます。
さらに、すべてのやり取りがデータで記録されるため、万が一トラブルが発生した場合でも履歴をさかのぼって原因を特定しやすい環境が整っています。こうした連携の強化によって、製作物の精度や納期の確実性も高まり、歯科医院と技工所双方にとって大きな効率化をもたらしています。
効率化と納期短縮
デジタル技工の導入によって、作業効率は飛躍的に上がります。従来のアナログ工程では、型取り、模型作製、手作業による補綴物製作と、多くの工程を経なければなりませんでした。これに対して、デジタル技工では、口腔内スキャンからCADソフトによる設計、CAM機器による自動加工までが一貫してデジタルで完結します。たとえば、小型のクラウンやインレーであれば、スキャン当日に設計・製作を完了し、翌日には納品できる場合もあります。さらに、機械加工により製作誤差が少なくなり、ヒューマンエラーによる再製作の手間も大幅に削減されます。このように、納期が短縮されることで、患者に対しても迅速な補綴物提供が可能となり、診療全体のスケジュールも組みやすくなります。
医院側にとっては、再診のための時間を大幅に削減できるため、より多くの患者対応にリソースを割けるようになります。効率化によるコスト削減効果も見逃せず、医院経営全体の安定化にも貢献します。スピードと品質を両立できる点が、デジタル技工導入の大きな魅力といえるでしょう。
より多くの患者の診察が可能
デジタル技工による作業時間の短縮は、診療キャパシティの拡大にも直結します。補綴物の製作期間が短くなり、型取りから装着までのプロセスがスピーディーに進むため、ひとりあたりの診療時間が圧縮されます。これにより、1日に診察できる患者数が増加し、医院全体のオペレーション効率が向上します。新規患者の受け入れ体制が強化できるだけではなく、リコール患者への定期フォローアップや急患対応にも余裕をもって対応できるようになります。患者側にとっても、治療完了までの通院回数が減少するため、利便性が向上し、結果として医院に対する信頼度も高まります。
さらに、スタッフの業務負担軽減にもつながるため、スタッフ満足度向上や人材定着率の改善にも好影響を与えるでしょう。デジタル技工は、単なる技術革新にとどまらず、医院経営全体の活性化にも寄与する重要な要素となりつつあります。